漫画ホラサス!

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【怖い話】-鏡- あなたにも訪れるかもしれない日常の中の恐怖

 

静かな夜、私は一日の疲れを癒やすべく、お風呂にゆっくりと浸かっていました。暖かい湯の感触が心地よく、しばしの安らぎに浸っていました。

 

「シャー…シャー…」

 

シャワーの音が耳に心地よく響きます。私はシャンプーの泡立てを始め、頭を洗い始めました。泡が頭を覆い、その瞬間、目を閉じるのが自然な流れでした。

 

しばらくして、何かがおかしいことに気づきました。シャワーの音が遠のいていくような…いや、別の音が混じっているような…。

 

「カラン…カラン…シャー…」

 

それは、どこか他の水が流れる音。しかし、この家には私一人。おかしい、風呂場以外で水を使うはずがないのに…。

 

私は思い切って目を開けました。しかし、目の前にはただいつもの風呂場の壁。何も変わった様子がない。私はただの気のせいかと思い、再び目を閉じてシャンプーを続けました。

 

しかし、その音は止まるどころか、徐々に大きくなっていきました。「カラン、シャー…カラン」という水の音は、今度ははっきりと私の耳に届き、それはまるで私のすぐそばで誰かが水を使っているかのよう…。

 

恐怖で背筋が凍りつきましたが、勇気を出してもう一度目を開けると、やはり何も変わっていません。私は自分を落ち着かせようと深呼吸しました。ただの幻聴か、疲れているのかもしれない。

 

私はふと風呂場の鏡に目をやりました。曇りガラス越しに何かぼんやりとした人影が映っているように見えたのです。

 

私は一瞬で凍りつき、目を疑いました。でも、目をこすってもその影は消えない。そして、その影はゆっくりと動き始めました。

 

恐怖で身動きが取れない私。しかし、その影は徐々に形を変え、私の目の前にあるはずのない、「もう一つの私」のような存在へと変わっていきました。

鏡の中の私は、私がするはずのない嘲笑うような表情を浮かべていました。

 

 

「これは夢だ…」私はそう自分に言い聞かせました。しかしその時、何か冷たいものが私の肩に触れました。

目を向けると、そこには何もありません。だが、その触感は明確で、それはまるで誰かの手のようでした。

 

慌ててシャワーを切り、風呂から出ようとしました。しかし、ドアが開かない。何度も何度も試みるものの、ドアはまるで外から何者かに抑えられているかのように、ビクともしません。

 

「カラン、カラン」その音は再び始まり、今度はさらに明確に、私の名前を呼ぶ声が混じり始めました。「カラン、シャー、〇〇…」

 

恐怖のあまり、私は力が抜けて床に座り込みました。そしてふと気がつくと、風呂場の壁にかけてあった鏡が見当たらないことに気づきました。

 

鏡はどこにもない。そこにあったのは、ただの壁。だが、私は確かに鏡に映る自分と、もう一人の「自分」を見たはずでした。

 

その時、私は理解しました。この家には、私以外に「もう一人」の存在がいることを。そして、その「もう一人」が何を求めているのかはわからないけれど、それが今、この瞬間にも私に近づいていることを。

 

私は再び目を閉じました。だが、今度は何も見たくない、何も聞きたくない、ただこの恐怖から逃れたい一心で。

 

「シャー…シャー…」シャワーの音が再び鳴り始めます。だが、今回はその音が私を安心させるどころか、深い絶望の中に突き落としていくようでした。

 

私はゆっくりと目を開け、何かが変わったことを願いましたが、現実は変わらず、ただ静かな風呂場だけがありました。しかし、その静けさが今では私にとって最大の恐怖でした。

 

「カラン、カラン」の音は止まり、代わりに「タッ…タッ…タッ…」という足音が聞こえてきました。

まるで誰かが風呂場に近づいてくるような…。

しかし、私以外にこの家には誰もいないはず。それでも、その足音は確実に、そして急速に近づいてきます。

 

私は全身が震えるのを感じながらも、何とか立ち上がり、最後の力を振り絞ってドアに向かいました。そして、何故か今回はドアが開きました。

ドアを開けた瞬間、冷たい空気が私の体を包み込み、一瞬で風呂場の蒸気が消え去りました。

 

私は風呂場から脱出し、家の中を走りました。そして、リビングにたどり着くと、そこには信じられない光景が広がっていました。

リビングの中央には大きな鏡が置かれており、その鏡の中には私がいます。でも、それは今の私ではなく、先ほど風呂場で見た「もう一人の私」でした。

 

鏡の中の私は微笑みながら、ゆっくりと手を振っています。その瞬間、私は何故だか全てを理解しました。

この家には、過去に私が知らない「もう一人の私」が存在していたのです。

そして、彼女は私に何かを伝えたくて、このような形で現れたのです。

 

恐怖と混乱の中、私は鏡に近づきました。鏡の中の「私」は、まるで何かを伝えようと口を動かしていますが、音は聞こえません。

私は手を伸ばし、鏡に触れようとしました。すると鏡の中の世界が波打つように揺れ、突然、全てが静寂に包まれました。

 

私が再び目を開けると、リビングにはもう鏡はありません。ただの普通の部屋。

そして、その晩に見た恐怖は、まるで夢だったかのように消え去っていました。

しかし、その出来事は私の中で深く刻まれ、私はこの家に隠された過去、そして「もう一人の私」の真実を知るための旅を始めることにしました。

 

その夜以降、私の生活は一変しました。日常の平和さが、あの出来事を夢や幻だと思わせるにはあまりにも現実的で、しかし、私の心の奥底には、消えない疑問と恐怖が巣食っていました。

私は「もう一人の私」について、そしてなぜ彼女が私に接触しようとしたのかについて、答えを求めることにしました。

 

調査を始めるため、まずは家の歴史から探り始めました。地元の図書館で過去の記録を漁り、前の所有者についての情報を集めました。

日がな一日を費やし、ついにある重要な手がかりを見つけ出しました。

 

この家にはかつて、私と同じ名前を持つ女性が住んでいたという記録です。彼女はある日突然失踪し、未だ発見されておらず当時の状況も謎が多い事が示唆されていました。

 

次に、私は家自体の奇妙な現象に焦点を当てました。特に風呂場とリビングに現れた鏡が、どうしても頭から離れませんでした。

私は専門家に相談し、家の構造と、もしかしたら存在するかもしれない隠し部屋や通路について調べました。

 

そしてある晩、深夜の探索中に、リビングの壁に隠された細い亀裂を見つけました。それをたどると、見えなかったはずの小さな扉が現れました。

 

心臓が高鳴り、手が震えながらも扉を開けると、そこには小さな部屋がありました。部屋の中央には、あの夜リビングに突如現れた鏡が、まるで待っていたかのようにそこに置かれていました。

 

 

部屋の隅には、古びた日記が落ちていました。それは「もう一人の私」、つまり過去にこの家に住んでいた女性のものでした。

日記を読むと、彼女が抱えていた孤独と苦悩、そして彼女がこの家に対して感じていた深い愛情が綴られていました。

 

そして、その最後のページには、彼女が自分の後を継ぐ人へのメッセージが記されていました。

 

「もしもこのメッセージを読んでいるなら、私はもうこの世にはいない。だけど、私の魂はまだこの家に留まり、守り続けている。私はあなたに会いたかった。だから、この鏡を通してあなたに接触しようとしたの。この家と、私の物語を受け継いで欲しい。」

 

私は全てを理解しました。あの恐怖の夜、私に接触しようとした「もう一人の私」は、実は私を導き、家の真実と彼女の存在を認識させようとしていたのです。

彼女は孤独な魂でありながら、この家を愛し、その歴史を守り続ける守護者だったのです。

 

私は日記を手に、鏡の前に立ちました。そして、心の中で彼女に語りかけました。

 

「ありがとう、私はあなたのメッセージを受け取りました。そして、この家とあなたの物語を大切にします。」

 

その夜以降、不思議なことに家の中はより温かく、安らかな雰囲気を纏うようになりました。私はこの家で新たな人生を歩み始めましたが、どこかで「もう一人の私」が見守っていることを感じながら。

そして私は知りました、この家にはもう恐怖はなく、ただの愛と絆だけが存在することを。

 

 

 

数か月が経過したある日、私は自宅のリビングで再びあの鏡を見つめていました。生活は平穏を取り戻し、あの夜の出来事も遠い記憶のように思えました。

 

しかし、時折鏡を通して何かが見えることがありました。最初はただの映り込みかと思っていたのですが、ある時、鏡の中に見知らぬ女性が現れ、私を怯えた目で見ていることに気づきました。

 

「また新しい幽霊か…?」私はそう思いました。しかし、その女性は何かを訴えかけるように私を見つめ続けます。

不思議に思いながらも、私はその女性に手を差し伸べました。ですが、私の手が鏡の表面を通り抜けることはありませんでした。

 

その女性の表情は変わらず、私を怯えた目で見つめ続けます。私は混乱しました。彼女は私に何を伝えたいのか? そして、私はなぜ彼女を助けることができないのか?

 

時間が経過し、鏡の中に現れる女性の存在が私の心をかき乱していました。彼女は何かを伝えようとしているように見えましたが、そのメッセージはいつも不明瞭で、私には理解できませんでした。

 

私は彼女が新たに現れた幽霊だと考え、何かしらの未解決の問題を抱えているのではないかと思い至りました。

 

ある晩、私は深い瞑想の中で鏡の女性と対話を試みました。驚くべきことに彼女は、私を鏡の中の幽霊だと誤解している事が分かりました。

 

この事実に気づいた瞬間、私は深い恐怖に襲われました。もしかすると彼女こそが現実世界で生きており、私は鏡の中の世界に閉じ込められた存在なのではないかと。

 

日々が過ぎ、私は彼女に何かしらの手がかりを与えようとしましたが、それは中々に難しい事でした。彼女はただただ怯えていて、私とのコミュニケーションを拒否していました。

 

しかし私はもはや単なる観察者ではなく、自分の運命を自らの手で変えることを決意していました。

彼女が新たにこの部屋に現れた住人であること、私は鏡の中の住人であることを私は確信していました。

 

だって、私の居る場所には何もなく、ただ真暗な空間に鏡だけ。

 

私はある計画を立てました。鏡の中から抜け出し、彼女との入れ替わりを試みるのです。

私は夜な夜な鏡の前で彼女とコミュニケーションを取り、彼女の信頼を得るために努力しました。

 

そして、ある晩、私たちの間で奇妙な現象が起こり始めました。部屋中が静かな光に包まれ、私たちの意識が入れ替わり始めたのです。

 

翌朝、私は信じられないことに、自分が鏡の外、彼女がいた世界に立っていることに気づきました。私は自由を手に入れ、鏡の中の世界から抜け出したのです。

 

 

鏡の世界から抜け出した後、私はその部屋から遠く離れた場所に新しい住居を見つけました。

新しい環境、新しい生活は、私にとって新たな始まりを意味していました。

 

過去の恐ろしい記憶は徐々に薄れ、すべてがただの悪夢だったのではないかとさえ思えるようになりました。

新しい友人、新しい仕事、新しい日々。私は過去を振り払い、前を向いて歩み始めました。

 

ある日のこと、長い一日を終えて家に戻り、リラックスするためにシャワーを浴びました。心地よい水の流れの中で、私はすべての疲れを洗い流し、リフレッシュした気持ちでリビングに戻りました。

 

しかし、リビングに入ると、何かが私の目を引きました。テーブルの上に、ひとつの手鏡が置かれているのです。「あれ?こんなところに鏡置いたっけ…?」私は自分でも記憶にない鏡を手に取り、戸惑いました。

 

手に取ったその鏡は、古びていて、どこか懐かしい感じがしました。しかし、私はこの鏡をどこで手に入れたのか、全く思い出せませんでした。鏡を覗き込むと、そこには私の姿が映っているだけでした。

 

でも、その瞬間、私の心の奥底には、かすかな不安がよぎりました。

 

過去の恐怖が夢だったのか現実だったのか、その境界がぼやけてきました。この鏡は、一体何を意味しているのでしょうか? それとも、ただの偶然でしょうか?

 

私は深く息を吸い込み、鏡をテーブルに戻しました。部屋を見渡すと、新しい生活の中で築いた幸せがありました。

 

 

 

 

ーアナタはシャンプーは目を瞑る派?

 

もしかしたら目を瞑っていたその瞬間、すでに鏡の中の世界に取り込まれていたのかもしれません。

 

だってほら、お風呂場、眼の前。鏡、あるでしょう?

 

 

 

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